ちょゆき(仮)’s blog

ショッピングセンターとデジマについて

これからの働き方

前回のブログで西野さんの講演内容に全く触れなかったので、まとめました。

イベントのキーワードが《常識だとされている働き方》に疑問をもち、新しい働き方を実現するなので、新しい働き方というテーマで3つのお話をされました。

 

 

 

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1.なぜ、芸人が絵本を書いているのか

 

【全てが追い風だったにも関わらず、スターになれなかった事に絶望】

20歳の時にスタートした『はねるのトびら』は、フジテレビが『夢で逢えたら』や『とぶぐすり(後にめちゃイケ)』を例に出し、「お笑い界のビックスターは8年ごとに誕生する」という〝お笑い8年周期説〟に則ってスタートした番組。

はねるのトびら - Wikipedia

 

そのような番組でセンターをもらい、番組は25歳の時にゴールデンに進出。

すべての条件が整ったにも関わらず、自分を取り巻く芸能界の縮図は驚くほど変わらなかった(番組が視聴率20%を超えても、上にはダウンタウンタモリなどの大御所が変わらず君臨していた)。スターになれなかった。

 

 

【スターを目指すために、一番便利な部分を切り落とす事を決断】

今のやり方ではスターになれない事(突き抜けない)に気付き、一番便利な「レギュラー番組以外のテレビの仕事を全部やめる」という決断をした。

 

便利な部分を切り落とすことで、新たな部分が進化し局面が変わるのではないかと期待し、何かを探していたところ、タモリさんから不意に「絵本を描け!」と言われた。

 

絵本をなんか全く興味がなかったが、タモリさんと飲みながら「絵本の悪口」が始まった。

 

「子供の頃に読んでいた絵本ってなんであんなに面白くないのか?」

 

ただ、飲みながら思ったのは、

「面白い絵本がないのではなく、大人が子供をナメていて、大人が考える『子供向けの絵本』しか子供に与えていないのではないか」

 

自分の子供の時を振り返っても、子供は大人が考えるほど、頭が悪くない。

世の中が考える『子供向けの絵本』という常識をぶっ潰すために、今の自分が読んで本気で面白いと思う絵本を描くことを決めた。

 

 

【素人の絵本作家がプロの絵本作家に勝つためには】

目標は、『いま存在する世界中のプロの絵本作家に勝つこと』

素人がプロに勝つためにはどうすればよいかと考えた。「画力」「出版のネットワーク」「コネ」。。。当たり前であるが、要素を並べてみると、素人はプロと比べると負けている所ばかりだった。

 

ただ、唯一勝っていた所は『時間』だった。

『時間』とは、一つの絵本の制作にかけられる時間の事。

 

絵本専業で食べている人は、コンスタントに絵本を出版しなければならない。

しかし、自分のような副業作家は極端な話、10年かけて一つの作品を作っても良い。

唯一、プロに勝てる『時間』という要素を最大限活用するために、時間をかけないと作れない作品を作ろうと考えた。

 

そして、最初に出した作品は6年かけたが3万部しか売れなかった。通常、絵本は5千部~1万部売れればヒットとされるので3万部もよく売れているのだが、圧倒的な差は生まれなかった。

 

どうすれば結果を出す事ができるかを突き詰めた結果、『お客さんに絵本を届けるまでを作品づくりと定義した』。

それまでは一生懸命時間をかけて作った絵本の販売を吉本興業と版元の幻冬舎にお任せしていた。しかし、作品を作るだけ作って届ける作業を他人任せにして、売れない事を環境のせいにするのは育児放棄と同じだと考え、作品をつくるということはお客様に絵本を届ける所までだと自分で定義し、お金や流通などを勉強した。

 

それからは売ることを必死で考えた。

まず、買うという事を分解し、「買う・買わない」を分けていった。

世の中の人が必ず買うものは、米、水、トイレットペーパーなどの生活必需品、要は必要なモノは買うし、必要ないモノは買わない。

作品を必要なモノに仕立てていくために、作品を「お土産化」すればよいと考えた。

 

さらに作品をお土産にするために必要なことは「体験」だと考えた。

「体験」を作り上げるために、自宅にあった原画を無料で貸し出し、その条件としてその場で絵本を売らせてもらう事をお願いした。

この原画展では絵本が本当に売れる。つまり原画展という体験のお土産として絵本が買われていくという事。

 

これにより、原画展を続けることで絵本が売れ続けることは確定した。

 

あとは、いかに短い期間で絵本を100万部売るか。

そのために、今までのノウハウを3作目の「えんとつ町のプペル」に全て注ぎ込んだ。

spotlight-media.jp

現在、「えんとつ町のプペル」は27万部売れているが、これはまぐれでもたまたまでもなく、どのタイミングで何をするかという売り方の戦略を入念に考え、売りにいく事を考えた。

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2.「えんとつ町のプペル」の作り方と届け方

 

えんとつ町のプペルの作り方】

過去の2作品と「えんとつ町のプペル」が大きく違う所は、分業制で作品を作った事。

きっかけは『そもそも、絵本はなぜ1人で作っているのだろうか?』という疑問。

例えば、テレビ番組を見ても、照明、美術、カメラなどそれぞれの役割が分業になって作品が作られる。その他、会社でもなんでも、世の中のほとんどのモノが分業制で作られているにも関わらず絵本は1人で作られていることになっている(あっても原作と作画を分けている程度)。

絵だって、建物を書くのが得意な人、森を書くのが得意な人、キャラクターのが得意な人などそれぞれ得意分野があるはず、それぞれの得意分野を分業し作品を作ったらすごい作品ができるのではないかと考えた。

 

が、、、

こんな誰だって思いつきそうな事が実現されていないのはなぜだと考えた。

突き詰めていくと、絵本は販売部数が少なく市場も小さいことから、分業性のようなコストのかかる手法が取れない事が分かってきた。

 

絵本を1人で作るしかない理由は『制作にお金をかけられない』からである事が分かった。

逆にお金さえ用意できれば、分業制という選択肢が取れる事が分かったので、クラウドファウンディングでお金を集める事にした。そして、クラウドソーシングでスタッフを集めた。

 

えんとつ町のプペル」に関しては、2回クラウドファウンディングをやり、1回目は「えんとつ町のプペルを作る」ために実施し、2回目は「えんとつ町のプペルを届ける」ために「えんとつ町のプペル展」という物をすごくお金をかけて作った。

lineblog.me

 

つまり「えんとつ町のプペル」に関してはクラウドファウンディングを「制作費を集めるクラウドファウンディング」「広告費を集めるクラウドファウンディング」と2回実施しており、延べ1万人の方に支援して頂き、5,600万円を集めた。これによって、あのような作品が生まれた。

 

えんとつ町のプペル」を作るために、一番最初にやった事は資金調達。まずお金を集めていなければあのような作品は生まれていなかった。10年前の絵本作家ではこのような手法で作品を作ることは物理的に不可能だったので、今までにない作品を作ることができた。

 

 

えんとつ町のプペルの届け方】

えんとつ町のプペル」は4年半かけて、35名のスタッフで作った。※作り方の話も細かい仕掛けを用意しているのだが、講演時間が残り少ないので、どこかのタイミングでブログに書きますとの事←楽しみ

 

届け方について、過去の作品で実施した個展で売るという手法(お土産化戦略)が1つ考えられた。

さらに新しい手法として「クラウドファウンディング」を活用した。

 

そもそも「クラウドファウンディング」がすごく誤解されている。

クラウドファウンディング」というのは「寄付型」と「購入型」の大きく2種類ある。

世の中の99.9%のクラウドファウンディングは「購入型」となる。例えば、3,000円払うと何かがもらえるなど明確な見返りがある。

えんとつ町のプペル」の場合だと3,000円支援してくれると、「えんとつ町のプペル」の完成品にサインを入れてお送りするというモノ。

 

「西野がクラウドファウンディングで5,600万円集めた」という事実だけが一人歩きし、TVのコメンテーターなどが「西野は集めた5,600万円を何に使うのか」という議論がよくなされている。

そこにそもそもの誤解がある。

購入型の「クラウドファウンディング」というものは支援金の見返りにリターンを提供するかも手法なので、3,000円支援してもらっても、リターンで絵本の完成品を送る(2,000円+送料、雑費)と言っているので、使えるお金は数百円しかない。もっというと、3,000円支援してもらってもリターンに3,200円かかってしまったら、200円の持ち出しとなる。

つまり、5,600万円集めても5,600万円を使えるわけではなく、その集めた額面には何の価値もない。

 

では、「クラウドファウンディング」ではどこの数字を見なければいけないのか?

それは『クラウドファンディングの支援者数』

えんとつ町のプペル」で言えば1万人という支援者数が大事。

 

例えば「えんとつ町のプペル」を2人で作れば、最低2冊は売れる。10万人で作れば10万冊売れる。

今までは『作り手』と『お客さん』が分かれていたが、これからの時代は『お客さんを作り手にすること』が重要。なぜなら作り手は必ずお客さんになるから。もう世の中に純粋なお客さんはいない。個人の発信力が強まったので、商品の批評も個人が発信できる。そう考えると国民が全員クリエイターという考え方になる。

 

一度は吉本興業から制作費を全額負担すると申し出があったが断った。そうすると作り手が限定されるから。つまり作品を売るために「クラウドファウンディングを共犯者づくりとして活用」した。1万人でつくったから、予約の段階で1万部売れた。そして、自分たちが作った「えんとつ町のプペル」だから、個人がSNSで発信をして口コミが広がった。

 

スマホが出てきたことで、これからのエンタメは全てこうなると思う。

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3.ウォルト・ディズニーの倒し方

 

えんとつ町のプペル」という作品を作った時点で、理論上ウォルト・ディズニーに勝てた。

 

 

空海クラウドファウンディングの先駆者】

ディズニーがやっている事は、『こんなすごいモノを創りました、皆さん味わってください!』という手法。

ディズニーを倒そうとするのだったら、『ディズニーよりもすごいテーマパークを創る』のではなく『ディズニーランドを作ろう!』というネタの方がよい。なぜなら、創る事に関わった人が絶対にくるから。

 

それは過去に空海がやっていた。

空海高野山を開こうとした時に、初めは国がお金を出すと言ったのに、空海はそれを断った。国のお金で箱を作った所で、お客さんが来なければ意味がない。

創る段階で集客したいから、国のお金を断って、お客さん1人、1人に手紙を出して、ちょっとずつ、ちょっとずつ支援をしてもらった。

 

つまり空海は『クラウドファウンディング』を行った。

 

そして支援した人は、僕たち私たちが協力した高野山だからといって、支援した全員が高野山に足を運んだ。その結果、高野山がすごく盛り上がった。

 

 

【これからの幸福はクオリティではなく伸び率】

これからディズニーを倒そうと思ったら、空海がやった方法だと思い『ディズニーランドをみんなで創ろう』と考えた。

『ディズニーランドをみんなで創ろう』というテーマは、出来る前に集客したいということ以外にもう一つ理由がある。

それは人間の幸福度は、『クオリティ』ではなく『伸び率』だと思っている。たとえば、いつもテストで95点を取っている人が96点を取ってもそれほど幸せではないけれど、いつもテストで0点の人が50点を取った時の方が飛び上がって喜ぶと思う。どちらが幸せかと問われれば、実は50点を取った人の方が幸福度は高いかもしれない。

 

そういう意味ではディズニーは、そもそものクオリティが高いので伸び率がない。それは今の日本に近いかもしれない。どこにでもコンビニあり便利だし、戦争もテロもなく治安はよい、欲しい物はある程度手に入る、僕たち超幸せなのに自殺者は減っていない。

 

そう考えるとこれからは伸び率を追求する事が大事になる。

伸び率を追求しようとするならば、必要なのは『不安』や『恐怖』などだ。例えば、起業してうまくいったらすごく嬉しいと思う。なぜなら起業する時点で絶対うまくいく保証などなかったはずで、その『不安』や『恐怖』から開放された時にはすごく嬉しいと思う。

つまり、幸福には『不安』や『恐怖』が内包されていた方がよい

 

 

【伸び率を追求するテーマパーク『おとぎ町』】

それを実現するために、埼玉県で『おとぎ町』という物を創っている。『おとぎ町』はみんなで町を創ろうというモノで、『リアルシムシティ』みたいなことをやっている。

 

www.otogimachi.com

 

camp-fire.jp

 

ある小学生が町に井戸が欲しいと言った。

調べたら、地下に水脈がある事が分かった。

そして井戸を作るために『クラウドファウンディング』を立ち上げた。

井戸を作るお金が集まった。

集まったお金を使って井戸を作り始めたが、2時間掘っても3時間掘っても水が出てこない。

『これはダメか』と思い始めた時に水がピュっと出てきた。

その時に、その場にいた全員が『うわぁぁぁー水だー!』と大興奮に包まれた。

 

水。たった水。

この井戸を掘っている間も近くの水道で手を洗っている。

 

だけどここから水が出ることが重要で、僕たちはたった水ですら、この道筋をたどれば水は出るはずだが、もしかしたら出ないかもしれないという『不安』や『恐怖』があると、水が出た時にこんなにも感動をする事ができる。

おとぎ町では水が出た打ち上げとかしている。

 

僕たちはもう物質的な幸せを獲得するのは無理。もう日本は整っちゃったから。

今、幸せを求めるのであれば精神的なモノ。

そう考えると『クオリティ』ではなく『伸び率』を追求した方がよい。

 

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