ちょゆき(仮)’s blog

ショッピングセンターとデジマについて

次世代テクノロジー研究会inビジネスフェア セミナーレポート

ビジネスフェア内で開催された

次世代テクノロジー研究会 Presents

SC進化論~明日から始められるテクノロジー活用~

のセッション内容メモ。

 

 

【次世代テクノロジー研究会とは】

次世代テクノロジー研究会は、SC協会主催の研究会で当初は『EC研究会』という名前でスタートし、オムニチャネル研究会→次世代テクノロジー研究会と名前を変え、次世代のSCに求められるテクノロジー活用を各社の取り組みと共に議論を重ねています。

参加企業は、パルコさん、TMDさん、丸井さんを筆頭に主要SC企業各社とダイアナさんなどの小売企業もご参加され、約2ヵ月に1回の頻度で開催。

※実は、僕も次世代テクノロジー研究会には、2回前から参加させて頂いています。

 

 

【セミナー登壇者】

コーディネーターは、パルコの林さん。

パネリストは、TMDの沢辺さん、丸井の臼井さん、アーバンリサーチの齊藤さん、中川政七商店の緒方さん。

みなさん単独でも講演をされている錚々たるメンバーです!

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主催者企画D|第41回日本ショッピングセンター全国大会 シンポジウム・セミナー

 

 

【各社の事例紹介】

 

TMD:109のウェブサイトと通販サイトをリニューアル

2016年10月9日に「8つの館サイト」と「2つのECサイト」を統合。

・ショップページの充実を図り、レコメンド機能を搭載。

・ショップスタッフにフォーカスを当てた仕立てにし、ショップスタッフが登場するWEBコンテンツを作成。それをSNSやニュースメディアにも展開。

・そもそも109スタッフ自体がインフルエンサーとしての影響力を持っているため、リニューアルサイトも情報拡散性を意識した。

www.shibuya109.jp

・SCの情報発信は「宣伝」から「共感」へと変化している。

・そのため、サイトリニューアル時はコンテンツやビジュアルを作ることが目的ではなく、スタッフが自ら投稿したくなるメディアを用意することを意識した。

 

 

■丸井:ラクチンきれいシューズ体験ストア

・1年間で50店舗展開。

・最大の特徴は在庫を持たないこと。

・自社ストアも無在庫化を進めている。

・レディスパンツにも体験ストアアイテムを拡大。

 

 

■アーバンリサーチ:デジタルを運営戦略に活用

数値化できることをデジタルと定義し、要素を大きく5つに分類

①顧客データ

・LTVを意識した分析(データマイニングクラスタ分析など)を実施。

・顕在化したボトルネック部分に対して、施策を実行。

②EC販売データ

機会ロス削減の観点で分析。

・在庫の一元化やオムニチャネルへの活用。

    ⇒店舗の受取サービスを強化。

③スタッフの声、レポート

・それまでの収集方法に問題があり、データ自体に価値がなかった。(レポート作成が形骸化していた)

・アプリにチャット接客機能を搭載し、データを蓄積。

・蓄積したデータをクラスタ分けし、サービス向上に繋げた。

・チャット接客で一番聞かれたのが「コーディネート」⇒自分たちはサイトに載せているつもりでもお客様が認識していなかった。また、コーディネート提案もマンネリ化していた。

④お客様の商品レビュー

・お気に入り商品にアラートを出すことを検討。

・どのタイミングでアラートを出すのが効果的かを分析し、購買率向上に繋げたい。

⑤世の中にあるトレンドワードやハッシュタグ

・オンラインのデータをリアル店舗に活かす。

・ネットとリアルを結ぶ企画の実行。

クラスタ分析(属性):データ管理、需要予測。

・オンラインとリアルで全く同じ企画を実施し、オムニチャネルを促進。

 

 

■中川政七商店:デジタル推進のための基盤づくり

・2016年で創業300周年。

・これからデジタルを推進。

・キーワードは「ユーザーファースト」&「全社最適」

・まず、デジタルよりもそれが実現できる体制づくりに着手

①組織の再編成

・WEBと情シスを統合

・販促とWEBの業務をひとつの部署に集約

②言葉化とその共有(こころえ、ミッション、タスク)

③簡易マニュアル作成とその共有・指導

施策面では、

④新規事業の立上げ:さんちプロジェクト(メディア+EC)

sunchi.jp

 

 

■パルコ:最新テクノロジー活用

3つの最新技術をチャレンジ。

①AI(人工知能)

・アプリのブログフィードにAI(人工知能)導入

・元々、ブログのクリップ率と購入率に相関があるのが分かっていたので、その部分の精度向上を目的とした。

②IoT

・館内のWi-fiデータを分析活用。

・外的(天気、温度)、内的な動向によるお客様の動きの変化を分析

③ロボット

・仙台PARCO2にてPepperとNAViiを実装。

www.fashionsnap.com

・インフォメーション機能の機械化をチャレンジ。

・接客だけでなく、棚卸の機械化も実験中。

・ショップスタッフの事務負荷を経験し、販売に注力できる環境を提供したい。

 

 

既存施策のブラッシングアップ

⇒カエルパルコの機能向上

・元々、店頭スタッフのWEB接客力アップを目的に実装。

・機能向上ではアプリポイントとの連動を実現。

 

店頭を起点に「アプリ」と「カエルパルコ」を展開。

・「アプリ」:来店前後を捉える仕組み

・「カエルパルコ」:オムニチャネル(WEB上の行動解析)

 

 

■その他SCの事例

・東神開発:玉川高島屋S.Cのアプリに館内ナビゲーション機能を搭載。アプリで車の駐車場所も検知。

イオンモール:無人運行バス

・アトレ:全ショップにiPadを導入。各種申請やブログ更新、売上閲覧に活用。

三菱地所:インバウンド対応のための翻訳アプリを開発。(19言語に対応)

 

 

テクノロジーの活用の取り組み方は各社各様で、企業の課題感や強みによって方向性は異なっている。

 

 

【専門店、SCが抱える課題と解決のためのテクノロジー活用】

そもそも何が課題でテクノロジー活用をするに至ったのか?

 

TMD:109ウェブ

・デベ主体のインフラにはあまり価値がないという意識があった。

・そもそも、ショップは自社アカウントや自分の個人アカウントで接客をしていた。

・今回のサイトリニュールで109が実施したのは導線設計。

⇒SCがメッセージを発信するのではなく、スタッフが紹介をする。

・「スタッフからの声がよりお客様に届くように」を意識しリアルとECの売上向上をめざした。

・109の自社メディアには50名ぐらいのインフルエンサーがいる。

⇒月1回のミーティングを実施。

⇒効果のフィードバックと評価により、インフルエンサーのモチベーションを維持。

 

 

■丸井:体験ストア

business.nikkeibp.co.jp

課題:丸井の店舗は全国にないので、ないエリアはECで対応していた。しかし、店舗はないが現物は見たいというニーズはあった。

 

(イベントで体験ストアを実施)

特徴:全サイズを店頭展開&決済はECサイト

お客様のメリット:試着(体験)を楽しめる

・常に在庫が店頭にある。→試着し放題

・買わないといけないというプレッシャーがない

・手ぶらで帰れる など

従業員のメリット:接客以外の煩雑な業務がない

・レジがない。

・在庫管理がない。

・個人情報の管理がない。

 

・このシステムは、マルイ以外でも利用できるように進めている。

・「ショールーミング」という言葉を「体験ストア」という言葉に置き換えた。

 

 

■アーバンリサーチ:自社アプリ

自社アプリ(UR STYLE)にチャット接客機能を導入。

www.urban-research.co.jp

・チャット接客:LINEのようなイメージ。

・LINEと違うのは、スタッフとのやりとりを第三者も見れる。

・チャットをデータとして確認してサービス向上に改善。

 

・チャットを通じてお客様がアプリ上で聞いていることは、ニーズや改善要素に直結する。例えば、WEBに掲載しているにも関わらずスタイリングについて聞かれることが多かったときに、調査してみるとキーワード検索で商品が上がってきていないことが分かったことなどある。

 

 

■中川政七商店:デジタル推進

・テクノロジーができることは大きく2つあり、「利便性強化」と「情報発信性強化」だと思っている。例えば、利便性でいえば、オムニチャネルや決済手段の多様化など。

 

・重要なのはテクノロジー以前に、インターネットで触れた情報とリアルで触れた情報で、お客様が同じ体感(共感や驚き)が得られることが重要。

・デジタルで考えると利便性を追求すればよいと思われがちだが、中川政七商店の商品は商品のストーリーをデジタル上でもリアルと同様の水準で伝える必要がある。しかし、現状、商品情報とストーリーは別のサイトに分散されてしまっている。それでは正しい価値が伝わらないので、見直しをしていく必要がある。

 

 

【まとめ】

・テクノロジーを考える上ではデータの活用は、今後より重要な要素となる。

・各社が共通するのは、各社が持っているデータを活用し、それを使って価値提供をおこなっている点。

・明日から始められるという点で言えば、自分たちが保有するデータで活用できるデータが何かを考えることが重要。

 

■テナントから見たSCが持つデータの価値

・データ分析は、実施施策の確認作業だと思っている。

・テナントが保有しているデータとSCが保有しているデータが持ち方が違う。(例えば買い回りなど)

⇒2つのデータを当ててみることで新たな気づきに繋がる可能性がある。

・テナントとSCの関係性が重要で、今後はデータを交換しあうべきと考えている。

・実施施策を感覚で捉えると、作り手と買い手のギャップに気づけない。データの確認は、自分たちの常識を疑うきっかけとなる。

⇒データが全てではないが、一つの事実と捉え、場合によってはデータに基づくチャレンジを実行することで、取り組みの幅は広がることもある。(今までの自分たちの感覚では取り組まない施策も、データに基づいてチャレンジしてみると意外にうまくいくこともある)

 

・SCが目指すことは1人のお客様に色々な店舗を使って頂き、SCとしてのエンゲージメントを高めることだと思う。

⇒両者のデータを分析することで、エンゲージメント向上のヒントが得られる可能性がある。

・テナント単独では投資できないテクノロジーをSCが標準のスペックとして用意してもらえればそれは大きな価値となる。

 

 

・逆に、ポイントカードなどを持たないSCであれば、積極的にテナントからのデータ提供を求め、SCをしてそれを分析することも今後重要となる。

 

 

■EC専業会社が展開するテクノロジーとの向き合い方

例えば、AmazonDash、AmazonEcho、AmazonGO など

・自社の顧客が何を求めていくかによると思う。

・例えば、AmazonEchoなどは接客をウェブ化することで、リアル店舗に対しても新たな価値を提供できる可能性がある。

・AmazonGOなども利便性という観点ではお客様サービスの向上には繋がるが、商品の価値を理解してもらうためにはストーリーをしっかり伝えていく必要があるのであれば、それは顧客ニーズにそぐわない。

 

 

・データは重要だが、価値のある情報は人を通じてしか伝わらない。

⇒自社ブランドに合わせてデータを最大限に活用し、テクノロジーにより新たな価値を提供するすべを模索することが今後のSCに求められる。

 

 

【所感】

・テクノロジー活用の取り組みは各社各様であるが、自社の強みを理解しその強みを高めてくれるテクノロジーは何か?という視点で活用を考える必要がある。

・開発したテクノロジーを自社だけで活用しようとすると大きな投資は難しいが、良いものは他のSCでも積極的に使うという考えに転換すれば、開発した企業の新たな収益基盤に繋がるし、SC業界のテクノロジー活用がさらに促進される。

・アトレはポイントカード導入時から、カードを販促ツールではなく、CRMの観点で運用しており、実はカードデータ分析は意外に知見を持っている。

⇒今までの知見をベースに、テクノロジーを活用していけば、アトレも新たな価値を提供できる可能性が高まり、PDCAサイクルの精度向上にも繋がる。